HASAMI groupという音楽グループがいます。とても魅力的な曲をたくさんつくっています。
彼らには「Internet Lovers」「インターネット向きすぎ君」というタイトルの楽曲があり、また、彼らのYouTubeのチャンネルには「YouTubeベストビデオ100」というYouTube上に無数にある動画の中から「素晴らしい」ものを100個選定して紡いだ、恐らくは大変な労力を割いて作られたと思われるMIX動画が複数個ある(2021年現在9個ある)。これらのことから推測されるように、彼らは大変にインターネットが好きなようだ。
インターネットを好いている音楽家が、自身のホームページをどのように作っているのか気になり、見てみた。果たしてそれは大変興味深いホームページであった。このホームページを詳細に調べることで、何事かに触れることになるかもしれない、ひょっとするとアウトサイダーアートが発生した瞬間を発見することになるかもしれない、そんな予感を抱き、私は解析を始めた。
彼らのオフィシャルホームページは下記である。
HASAMI groupオフィシャルホームページ
まずページ冒頭に「HASAMI groupオフィシャルホームページ」という文字がメラメラと燃えているようなエフェクトがかけられたGIF動画がある。その横には少年が瞬きをするGIF動画が添えられている。
この少年の画像は元々はフリー素材なのではないかと推測されるが、「http://satopi95.fc2web.com/」という別のサイトの画像を勝手に読み込んでいるようだ。後述するが、HASAMI groupのオフィシャルホームページは「http://satopi95.fc2web.com/」の画像を勝手に読み込むという行為を他の箇所でもやっている。
「http://satopi95.fc2web.com/」は「琺瑯看板が大好きなぼく」が琺瑯看板を紹介する小学生のサイトであり、HASAMI groupの音楽とは無関係と思われる。
ホームページ背景には犬の足跡のアニメ画像が配されており、全体的に安っぽい印象を与えている。この画像はフリー素材サイト(https://www.civillink.net/)のものを勝手に読み込んでいる。一般にフリー素材はダウンロードをして、自身のサーバーにアップするものだが(そうしないと元サイトのサーバーに負担をかけてしまうから)、ここでは勝手に元サイトの画像を読み込むという手法が取られている。後述するが、これは悪意があってやっているわけではなく、単にページ作成者に知識がないのだと思われる。これも後述するが、ページ作成者はHASAMI groupの中心人物、青木氏と思われる。
GIF動画の下には「☆☆☆HASAMI groupのオフィシャルサイトへようこそ!☆☆☆」というテキストが左から右へと流れている。この動きはjavascriptやCSS3ではなく、「marquee」というhtmlタグによって実装されている。この「marquee」というタグは現在では廃止が推奨されており、Internet Explorerが独自に追加したタグで、1997年に公開された「Internet Explorer 4」以降のブラウザでなら動くらしい。インターネットが一般に普及したのは1995年で、当時はホームページに「動き」はなく、1997年に現れた「横に流れる文字」というのは革新的だったと思われる。が、その当時流行っただけに、また、文字が流れたところで意味がないという理由からか、今となってはサイトにあるだけ恥ずかしい仕掛けである。
いつ頃からホームページ上の「横に流れる文字」が恥ずかしいものとなったのか詳細は不明だが、遅くともjQuery(javascriptのライブラリのこと。これによってサイトに動きをつけることが容易になった)が公開された2006年には、時代遅れの産物になっていたと推測される。
つまり、2021年現在「marquee」を使っているページ作成者(恐らくは青木氏)の感性の一部は、1997年から2006年の間のどこかでストップしている(あるいはその時期に執拗に固執している)、といえるのではないだろうか。この大胆な決めつけはしかし、HASAMI groupの音楽世界を覗く者にとって、妙な説得力があるような気がしてならない。
ちなみに青木氏はプロフィールには「2006年に当時中学生だった」とあるので氏は1990~1993年生まれと思われる。
「marquee」の下にはグループのイメージ画像が載っている。
しかし奇妙なことに、この画像はtwitterのサーバーから読み込まれている。元画像は青木氏のtwitterの2015年1月30日にアップしたツイートである(このことからページ作成者が青木氏であると推測される)。なぜ自分のサーバーにアップしないのだろうか。例えばもしtwitterのサーバーがダウンしたら、この画像は表示されなくなる。なぜわざわざこんな画像の読み込み方をしているのだろう。何か意味はあるのだろうか。しかし、ここで深読みをするのは無駄と思われる。また、画像自体が深読みする意欲を削ぐ。彩度のきつい花畑の写真の上に、マウスで描いた蜂と蜂蜜と人間の絵、その下にカタカナで「ハサミグループ」。「HASAMI」がアルファベット大文字で「group」は小文字であるという、ある程度こだわりがありそうなスペリングであるにもかかわらず、なぜこの画像ではカタカナなのだろうか。私はそこに意味はない、と判断した。恐らくは上記すべては適当な作者の資質が招いた結果ではないか。
イメージ画像の下にはグループのキャッチコピーと最新作が載っている。キャッチコピーには「HASAMI groupは15年間ずっとアマチュアでがんばってきた音楽グループです!」とある。後述するが、リンク切れや下層ページの破損、未だに「marquee」を使っているなど、いかにも「もはや運営されていないホームページ」という雰囲気を存分に漂わせながら、しかし「15年間」という数字が正確である、つまりちゃんと更新されているホームページである、という事実がこのホームページの最も奇妙な点である。
ここで区切りが設けられており、その下に「おすすめ曲」という欄があり、「景色がほしい」という楽曲のYouTubeのリンクが貼ってある。HASAMI groupのことが気になってサイトを訪れた人は、ここでおすすめ曲が聴けるわけだ。それはいいのだが、妙なのはその下である。「レイディ」とクレヨンで描かれた女性の画像があるのだが、この画像の説明がなにも書かれていないし、リンクでもないのである。
「LADY」という楽曲があるので、それも「おすすめ曲」である、ということなのだろうか。だとしたら「LADY」もYouTubeにあるのだからリンクを貼ればいいと思うのだが。この用途がわからない画像に、しかし「lady.png」という妥当な名前がついていることにイラっとする人も世の中にはいるのかもしれない。
話は少しそれるが、このサイトでは画像ファイルや下層ページのファイルは、すべて「hasamigroup」フォルダ直下に並列に置かれているようだ。ページ作成者(恐らくは青木氏)はファイル管理は苦手なのかもしれない。
ここでもう一度区切りが設けられており、下層ページへのリンク一覧が並ぶ。下層ページまでいちいちつっこむのはもう面倒なので止めるが、「音源紹介」という比較的、音楽家にとって重要と思われるリンク先は、更新が2017年で止まっているようだ(2021年現在)。また、「おまけ」という非常に気になるリンク先は、ページが破損しているうえに文字化けを起こしている(気になる人もいるだろうが、調べても「HASAMI group全曲総選挙」というファンの人気曲アンケート結果があるだけで、特に見なくてもいいと思われる)。
その下に「※おたよりまっています!」という太字とメールを促すようなGIF動画がある。ここは前述の「http://satopi95.fc2web.com/」からそのまま持ってきているようだ。また驚くべきことに「※おたよりまっています!」と書いてあるわりにメールやフォームへのリンクはない。「おたより」を送りたい人はどうすればいいのだろうか。
その下に画像のリンク切れがあるので、ここにおたよりの送り先とかがあったのだろうか、と思う人がいるかもしれないが「http://www.sugoicounter.com/」という画像リンクなので、ここにはアクセス数のカウンターがあったと思われる(「あなたはxxx人目の訪問者です」みたいな。昔インターネットではそういうものが流行っていたらしい)。
ここまでサイトを見て、サイトの作成者(恐らくは青木氏)のインターネットのシステムへの理解度は決して高くはなく、恐らくは「こうすれば無料でサイトが作れます」みたいなサイト(しかも古いやつ。fc2て)を見つつ、このサイトを作ったと思われる。
大好きな「インターネット」のコンテンツには興味が向くが、そのシステムにはあまり興味が向かない。これはひょっとしたらHASAMI groupの音楽制作にも共通していることなのではないだろうか。この大胆な決めつけは、しかしHASAMI groupの音楽世界を覗く者にとって、妙な説得力があるような気がしてならない。
オフィシャルサイトトップページのアドレスは
http://iaodaisuke.web.fc2.com/hasamigroup/inde.html
である。
「inde.html」というファイル名は驚くべき名前である(普通index.htmlである、というかindexでないと意味がない。省略されないから)。そして、もっと驚くことに、ルートドメインがある。ルートドメインを見ると「青木龍一郎のホームページ」というものが現れる。
HASAMI groupのトップページだけでも驚きの連続であったのに、そこには村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」のシナモンの要塞のごとき青木氏の迷宮が蜘蛛の巣状に広がっている。これらは検証を続けるべき宝の山なのか、はたまたインターネット上のちりあくたなのか。
最後に、「iaodaisuke」というのは何なのか。人物名っぽいが「イアオ」という姓があるのだろうか。はたまた、aokiの子音を除いて入れ替えた文字列なのか。
青木氏が築いた迷宮を攻略するものは今後現れるのだろうか。
ここまでの調査が私の限界である。