中華一番というHIPHOPクルー

見ていて、こんなに幸せな気分になる写真が他にあるだろうか。これは中華一番という札幌のHIPHOPチームの写真だ。全員笑顔が素敵だし、ホスト風の美意識を持っていそうな人物がいることが、不敵な多様性を感じさせる。

彼らのオフィシャルホームページには、この写真に「REAL STREET CHILDREN」というキャッチコピーが添えられている。明らかに頭悪そうに見える芸術家特有の言葉の鋭さを彼らは持っている。その点ではどついたるねんとの共通性を見出せそうだ。奇しくも、彼らが殺害塩化ビニールからリリースしたCD作品「クレイジーレズ」(すさまじいタイトルだ)のマスタリングは、どつのうーちゃんが担当したらしい。

YouTubeでは、彼らのテーマ曲を聞くことができる。

トラックがどうとか、リリックがどうというより、なんなんだこいつらは、という存在を叩きつけられるような衝撃と面白さがある。

オフィシャルのホームページやツイッターはあるが、とにかくわかりづらい。現在活動中なのかもわからない。メンバーもはっきりとはわからない。極端に年下の学生のMCもいるらしい。精神的支柱としてホームレスのお年寄りもメンバーにいたらしい(現在はお亡くなりになったとのこと)。その人が、彼らのライブに大量の空き缶をもって現れたというエピソードもあるらしい。

わかりづらくはあるが、文章は非常に面白い。ツイッターには武勇伝が列挙されており、ネット上には15000字インタビューというものもある。これらの文章はりきまる、という人が書いているようだが、彼が中華一番のメンバーなのかははっきりしない。が、彼個人のツイッターをみると、中華一番の世界観とは対照的な傷や痛みが見え隠れし、独特の文才を感じる。中華一番のテキストでのパブリックイメージが「詳細がわからないが、とにかく面白い」という評価を獲得しているのは、彼に依るところが大きいのではないだろうか。

MCとして参加している本気汁とMC死後硬直は、他のバンドではそれぞれベースとドラムを担当しており、巧みなスキルを持っている。このようなぶっとんだMCを擁するチームのトラックメーカーは、対照的に控えめな音楽オタクかつ常識人である場合が多いと思うのだが、このチームのトラックメーカーwakiga beatsはそのようなステレオタイプからは遠いところにいるようだ。件の15000字インタビューでは大便にまつわるエピソードを披露し、彼もMC陣とアティチュードを共有していることがうかがえる。彼はかなりの曲者と思われる。そして件のホスト的価値観を持っていそうなMCなど、多様な価値観が、どうやら大量の酒とそこから誘発される大便の阻喪によって一つの絆となり、チームが結束されているように思われる。

彼らがどんな表現をするのか、続きが非常に気になる。